お腹が空いている時に大事な決断をすると失敗するぞ!みたいな実験の話
「空腹で重要な決断をするな!」って論文(R)がおもしろかったのでメモ。
これはダンディー大学の研究で、50人の若い男女を対象にしてます(だいたい21歳ぐらい)。だいたいどんな実験だったかといいますと、
- みんながお腹が空いているときに意思決定をする
- 1〜2週間のあいだをおく
- みんなが満腹のときに意思決定をする
- 意思決定にどんな違いが出たかをみる
って感じです。参加者が行った意思決定のパターンは3種類で、
- いまなら5本のチョコレートバーをもらえるけど、あとでなら10本のチョコレートバーをもらえるとしたら、どれぐらい待てる?
- いまなら10ドルをもらえるけど、あとでなら20ドルをもらえるとしたら、どれぐらい待てる?
- いまなら無料で10曲をダウンロードできるけど、あとでなら20曲をダウンロードできるとしたら、どれぐらい待てる?
みたいになってます。要するに、空腹時と満腹時で「合理的な判断に違いが出るか?」ってポイントをチェックしたわけですね。
で、それでどんな結果が出ますと、
- みんな空腹時には目先の利益に飛びついた!
- たいていの人は、満腹時には平均で「35日は待てる!」と答えたのに、空腹時には平均で「3日しか待てない!」と答えた
だったそうです。空腹時にチョコレートバーに飛びつくのは当たり前ですけど、お金やモノにも弱くなってしまうわけですね。
研究チームいわく、
被験者の選好には非常に大きな変化が見られた。空腹のとき、人間は長期的な利益よりも短期的な利益に飛びつくのだ。
もっとも、たいていの人は、空腹の状態でスーパーマーケットに行ってはいけないことに気づいているだろう。空腹のときほど、人は不健康で高カロリーな食品を選んでしまうからだ。
しかし、多くの人が気づいていないのは、空腹の悪影響がおよぶのは食事の選択だけではない、という点だ。たとえば、空腹の時にお金がからむ意思決定を行うと、いつもより目先の利益に飛びつきやすくなってしまう。
とのこと。まぁ空腹ってのは人間の根源的な欲求なんで、食事以外の選好に影響をあたえても不思議じゃない気がしますな。
現代では多くの人がカロリー制限ダイエットにはげみ、宗教上の理由から断食をする人も多い。しかし、空腹が私たちの意思決定に影響を与えるというポイントは、押さえておくべきだろう。
ってことで、なんか大事な決断をするときは、お腹をいっぱいにしといた方が良さげっすね。
が、マニアックな人であれば、ここで「大事な決断はお腹が空いてるときにすべし」ってデータが2014年にあったことをご記憶のケースもありましょう。これはユトレヒト大学の調査で、学生に意思決定ゲームをしてもらったら、空腹時のほうが成績が良かったというんですね。
なんだか今回の結果と矛盾してるようですが、両者の実験デザインを見てみれば、実際にはそんなことはありませんで、
- 空腹時には合理的な判断ができなくなる(今回の実験結果)
- 空腹時には直感的な判断力が上がる(2014年実験)
みたいな違いになっております。つまり、勘で答えを出したいときには空腹が良くて、逆にじっくり考えて長期的な決断を下したい時には満腹がいいわけですね。これはなかなか重要なポイントかもですなー。
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