このブログを検索

今週半ばの小ネタ:オリーブオイルやっぱりすごい説、ワクチン接種後の運動すごい説、円形脱毛症にビタミンDの頭皮注射が効く?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

     

 

 

オリーブオイルを取り入れるとどれぐらい死亡リスクは下がるのか?

オリーブオイルはアンチエイジングに役立つよなー」ってのはよく言われるところですが、新たに「オリーブオイルで死亡リスクが下がるかもよー」って話(R)が出ておりました。

 

 

これは現在も進行中の2つの前向きコホート研究の分析で、ベースライン時(1990年)に心血管疾患(CVD)や癌を発症していない92,383人(女性66%)を対象にしたもの。食事の摂取量は、調査のスタート時から4年ごとにアンケートを使って測定されたもので、ここに加えて体重や喫煙状況、身体活動などもチェックしております。全体的にサンプルサイズは大きいし、長期間にわたってフォローアップしているし、アンケートも頻繁に行っているしで、なかなか良い研究じゃないでしょうか。

 


で、28年間の調査期間中に36,856人の死亡者が出まして、運動量やタバコなどのデータをもとに数字を調整したところ、分析の結果は以下のようになりました。

 

  • オリーブオイルの摂取量が最も多いカテゴリー(1日7グラム以上)の参加者は、最も少ないカテゴリー(全く摂取しない、または月に1回未満)の参加者と比較して、追跡期間中に総死亡および心血管死亡のリスクが19%、がん死亡のリスクが17%、神経変性による死亡のリスクが29%、そして呼吸器死亡のリスクが18%低かった

 

  • 代替分析では、1日10gのマーガリンを10gのオリーブオイルに置き換えることで、総死亡のリスクが13%低下する。

 

  • 1日10gのバター、マヨネーズ、乳脂肪を同量のオリーブオイルに置き換えると、総死亡のリスクがそれぞれ14%、19%、13%低くなると推定される。

 

  • 心疾患、癌、神経変性疾患、呼吸器疾患など特定の死因についても、ほぼ上と同じような結果が報告された。

 

  • オリーブオイルを他の植物油に置き換えることは、総死亡率や特定死因の改善とは関連がなかった。

 

ということで、あらためて「うーん、オリーブオイルすごいな」って印象ですね。だいたい1日に大さじ0.5杯以上のオリーブオイルを摂取することで全死亡リスクが19%低下するかもしれないってのは良いですなー。

 

 

なぜここまでオリーブオイルが良いのかについては不明点も多いんですが、オリーブオイルには一価不飽和脂肪酸(特にオレイン酸)が多いし、ビタミンEやポリフェノールなどの抗炎症成分も大量に含まれているので、不思議じゃない気もしております。まぁあくまで観察研究なので誤差は大きく出るでしょうし、あくまでもオリーブオイルは油なので「ガンガン飲もうぜ!」って話にはならんのですが、ふだんの油(バターとか大豆油とか)の代わりに使うのはめちゃくちゃオススメっすね。

  

 

 

 

ワクチン接種後の運動で抗体が増えるかも?

なかなか収束しない新型コロナですが、「ワクチン接種後の運動が良いかも?」という話が出ておりました(R)。習慣的な運動が感染症の死亡リスクを減らすのは常識だし、予防接種前の運動が抗体反応を高めるって説も過去にあったんですが、予防接種後運動も良いって報告はめずらしいっすね。

 

 

この研究がざっくりどんなものだったかと言いますと、

 

  • 48人の男女がインフルエンザワクチンを接種し、42人が最終解析に含まれた
  • 36人の参加者がファイザーのCOVID-19ワクチンの初回接種を受けた
  • 参加者を運動グループと何もしないグループに無作為に割り付け、抗体反応の違いをチェックする

 

という感じになります。運動をしたグループは、いずれもワクチン投与後30分以内に最大心拍数の60~70%の有酸素運動をしたとのこと。動の時間は90分でで、インフルエンザの3価ワクチンインを打った一部の参加者には 45 分のセッションを割り当てたとのこと。

 

 

また、インフルエンザワクチングループはエアロバイクを使い、COVID-19ワクチングループは屋外でジョギングを行ったそうです。いっぽうで「運動をしないグループ」は、運動の代わりに90分間のビデオ鑑賞をしたそうです。

 

 

でもって、ワクチン接種の前後に血液サンプルを採取したところ、以下のような結果になりました。

 

  • 何もしなかったグループと比較して、90分の運動セッションを行ったすべてのグループで、2週間および4週間後の抗体反応が増加した
  • 45分の運動セッションを行った場合は、コントロールと比較して抗体の増加は見られなかった。運動はワクチンの副反応の増加とは関連していなかった

 

だったそうです。ということで、ワクチンの後にややキツ目の運動を90分間行ったグループは、副反応が増えずに最大4週間にわたって血清抗体が増加したみたいですね。うーん、おもしろい。

 

 

もちろん、サンプル数が少ない研究ですし、激しめの運動を行ったのは若い人(18〜33歳)だけなので、「ワクチン後は運動すべき!」だと決まったわけじゃないのでご注意ください。もし試してみたい時は必ず専門家のアドバイスを受けるべきなのは言うまでもございません。

 

 

 
円形脱毛症にビタミンDの頭皮注射が効くかも?

ビタミンDについては死ぬほど書いてますが、新たに「頭皮にビタミンDを注射すると発毛するのでは?」ってデータ(R)が出ておりました。ここでいう「円形脱毛症」ってのはAGAとは別物で、炎症によってマダラの脱毛が生じる状態を意味しております。

 

 

で、昔から「この症状にはビタミンDレベルが低いのでは?」と言われてまして、ビタミンDで改善する可能性が指摘されてきたんですよ。そこで、このRCTでは、円形脱毛症に悩む患者さん60名を対象にしてまして、

 

  1. ビタミンDの局所注射:4 週に21回、最大 1 ミリリットル(10 万 IU)のビタミン D3 を最大 3 回まで注射する(3回とも最大量を投与した場合、12週間で30万IU、1日あたり3,571IUの投与となる)

  2. 生理食塩水の局所注射:ビタミンDと同じタイミングで生理食塩水0.9%を注射する

 

のどちらかに無作為に割り付けたんだそうな。ビタミンDを頭皮に打つってやり方があるものなんですねぇ。

 

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • ビタミンDを打ったグループは、30人中16人が75%超の再生率を獲得。12人が完全に発毛した。生理食塩水のグループに発毛はほぼみられなかった
  • また、ビタミンDグループは疾患の徴候が減少し、3ヶ月のフォローアップでも症状の再発は見られなかった
  • ビタミンDグループは4人に血管迷走神経発作が発生したが、それ以外の副作用は軽微だった

 

だったそうで、かなり良い感じの効果が得られてますね。まぁそう簡単にビタミンD注射をするわけにはいかんでしょうが、炎症のせいで脱毛が起きている人は体内のビタミンDレベルを調べてみるのは良いかもですな。

 


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM