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メンタル改善の強力テク「セルフコンパッション・レター」とは?

 


近年、心理療法の世界で「メンタルをめっちゃ悪化させる最大要因のひとつ」と言われるのが「恥」の感情であります。これについては、

 

 

などを参照していただければと思いますが、「恥」ってのは他のネガティブな感情(怒りとか不安)よりも辛い経験になることが多く、自己嫌悪を引き起こしやすいとされてるんですな。

 

 

過去の研究でも、「恥」を多く感じる人ほど、社会不安、うつ病、摂食障害、体調不良、依存症などにハマりやすいことがわかってたりします。ここらへんの問題について手軽に知りたい方は、「恥(シェイム)…生きづらさの根っこにあるもの」をどうぞ。恥の弊害と対策がコンパクトにまとまった良書なんで、恥の問題にお悩みの方は手にとっていただければと(かくいう私も「恥」を抱きやすい人間ですが、本書のおかげでだいぶ楽になりました)。

 

 

では、この「恥」を抱きやすい人はどうすればいいのかってことですが、最近良く聞くのが

 

  • セルフコンパッションが解毒剤になるのでは?

 

って考え方です。セルフコンパッションは、当ブログではおなじみの概念でして、

 

 

などをご参照ください。簡単に言えば、「自分に対して思いやりをもとうぜ!」って考え方で、恥でメンタルを病む人ほどこれができてないことが多いんですよ。

 

 

ってことで、近ごろハーバード大学医学部などのチームが行った研究(R)では、「セルフコンパッション・レターがいいぜ!」と結論づけていて、恥にお悩みの方には使えそうな内容になっておりました。

 

 

これは、恥の感情に苦しむことが多い高羞恥心のある男女68名を対象にしたもので、参加者の平均年齢は20歳だったとのこと。実験では全体を2つのグループにわけまして、

 

  1. セルフコンパッショングループ:みんなにセルフコンパッションに関する短い動画を視聴してもらい、その後で、セルフコンパッション・レターを実践してもらう。

  2. コントロールグループ:特になにもしない。

 

って感じで、半分の人にだけセルフコンパッションを伝授したらしい。

 

 

ここで使われた「セルフコンパッション・レター」ってのは、2010年ごろから使われている定番のメソッド(R)で、これまでもメンタルの改善について良い成果が報告されてきた手法であります。そのやり方はシンプルで、だいたい以下のようになります。

 

  1. まずは、自分自身について、「恥ずかしい」「不安だ」「十分でない」と感じていることをひとつピックアップ。自分の過去の行動、性格、能力、人間関係など、どんなものでもいいので、恥や不安を感じるものを選びましょう。


  2. ピックアップしたものごとについて、15〜30分ぐらいかけて文章に書き出します。それについて、自分がどう感じたか(悲しい? 恥ずかしい? 怒っている?)、何が起こったか、自分の感情について何をしたか、その後でどうなったかなどを言葉にしていきましょう。できるだけ正直に、自分以外の誰にも見られないことを意識するのがコツ。


  3. 次に、さきほど書いた自分の嫌いな部分を、以下のガイドラインに従って書き直します。

    ・自分のことを無条件に受け入れてくれる超親しい友人がいると想像し、その人は、自分のこの嫌な部分について、どんな言葉をかけてくれるのかを考え、その言葉を書き出す。

    ・「誰にでも自分について嫌なところはある」「世の中に欠点のない人なんていない」という事実を思い出し、自分が悩んでいることと同じことで悩んでいる人が、世の中にどれだけいるのか考えて書き出す。

    ・ 恥をかいた出来事を、より他人事のような視点から思い起こし、 感情を誇張したり、自分の行動をジャッジせずに、あくまで客観的に、自分が経験した状況、思考、感情を描写する。

 

こんな感じで、自分が体験した恥の感情や思考を、複数の視点からとらえ直すのがポイントになります。すべてを書き終わった時点でだいぶ恥の感情はやわらぐはずだし、その紙を手元にとっておき、また何か嫌なことがあったよきに読み返してみるのもいいでしょう。

 

 

で、実験の結果も、セルフコンパッション・レターの効果を示してまして、研究チームいわく、

 

セルフコンパッション・レターの実践は、恥の減少について中~大の効果量を示した。

自己批判の減少については中程度の効果量を示した。

驚くべきことに、これらのメリットは1ヶ月のフォローアップ期間中も維持され、恥と自己批判の改善が持続することが示唆された。

 

とのことで、この手のメンタル改善テクニックのなかでも、かなり大きな効果量が出てるんじゃないでしょうか。今回のは小規模な試験ですが、過去の調査と合わせて考えると、やはり使える技法なのかなーと思った次第です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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