結局「カロリーゼロ」は本当に体に悪いのか? | 渡辺雄二『食べるなら、どっち! ?』
「食べるなら、どっち! ?」って本が売れていると聞いて読んでみたら、あまりにもドイヒーな内容だったので、ちょっと書いてみましょう。
本当に人工甘味料は体に悪いのか?
「食べるなら、どっち! ?」は、普通のコーラとダイエットコーラのような類似商品をくらべて、どっちのほうが安全かを教えてくれる本。その判断基準は超カンタンで、「人工の添加物が入っているものはすべて悪!」って発想なんですな。そのため、砂糖がガッツリ入ったコーラよりも、人工甘味料で甘くしたダイエットコーラのほうが悪者あつかいされます。
で、問題なのは、いままでに人工甘味料の悪影響を立証した研究がないところ。2009年の研究では、ダイエット系の炭酸飲料が健康や体組成に悪いって結果は出なかったですし[1]、糖尿病や肥満を引き起こすリスクもなかったんですな。[2][3]
まぁ、今から「やっぱり人工甘味料は体に悪かった!」って実証研究が出る可能性も否定はできませんが、少なくとも現時点では、「食べるなら、どっち! ?」のように「人工甘味料は害悪!」と叫ぶのは無理。
でも、定期的に人工甘味料が悪いってニュースが出るじゃん!
人工甘味料が体に悪い証拠はないのに、ネットでは定期的に「人工甘味料は太ることが判明!」みたいなニュースをみかけますよね。たとえば、こういうのとか。
カロリーゼロなのになぜ?人口甘味料を定期的に摂ると6倍太る - Ameba News [アメーバニュース]
バーバラ・コーキー ...
このニュースで取り上げられている研究は、人工甘味料が体に悪いことを実証したわけじゃなくて、たんに「人工甘味料を定期的にとっている人には太っている人が多い」っていうリサーチ結果を伝えてるだけなんですね。なので、「人工甘味料をとるから太る」んじゃなくて、「太っている人は人工甘味料を手にとりやすい」だけかもしれない。実際、不健康な人ほどダイエット系の炭酸飲料を飲んでいるってデータもありますしね。[2][3]
あと、同じニュースにある
ボストン大学医学部のバーバラ・コーキー博士の研究によると、すい臓は人工甘味料にも反応し、大量のインスリンを出すことがわかりました。それによって、余分な脂肪が蓄積され、太るしくみが発見されたのです
ってのは、かなり誤解をまねく表現。すい臓がインスリンを出すのは事実ですけども、実験で使われたアスパルテームは量が多すぎて、市販のダイエット系炭酸飲料とはくらべちゃいけないんですね。「人工甘味料入は血糖値に大きな影響は無い」って調査が山ほどあるのは[4][5]、以前にも書いたとおりです。
ちなみに、人工甘味料の摂取量をまったく考えずに、たんに「人工甘味料が入ってるからダメだ!」と煽るのは、「食べるなら、どっち! ?」でも使われていた主張でした。みなさまにおかれましては、くれぐれも不要な心配をなさいませぬよう。
関連記事
参照
- Passman CM, et al. Effect of soda consumption on urinary stone risk parameters. (2009)
- Nettleton JA, et al. Diet soda intake and risk of incident metabolic syndrome and type 2 diabetes in the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA). (2009)
- Dhingra R, et al. Soft drink consumption and risk of developing cardiometabolic risk factors and the metabolic syndrome in middle-aged adults in the community. (2007)
- Zöller M, Price MR, Baldwin RW. Evaluation of 51Cr release for detecting cell-mediated cytotoxic responses to solid chemically induced rat tumours.(1977)
- Wolf-Novak LC, et al. Aspartame ingestion with and without carbohydrate in phenylketonuric and normal subjects: effect on plasma concentrations of amino acids, glucose, and insulin.(1990)