結局、糖尿病を治すには糖質制限ダイエットがベストなの?
糖尿病の治療には糖質制限がベスト?
ちょい前に「糖尿病にはまず減量!」って話を書いたところ、「糖質制限が一番効くじゃないんですか?」みたいなご質問をいくつかいただいたんで、ちょっと考えてみましょう。
確かに、糖質制限を糖尿病の治療に使っている病院は少なくないですし、「糖を処理できない病気なんだから糖質を減らせばOK」って発想は自然なように思えてしまうところです。「糖尿病には糖質制限しかない!」みたいな文章も、ネットではよく見かけますし。
が、結論から言っちゃえば、「糖尿病の治療には糖質制限がベスト!」なんてことはまったくないです。良質な証拠を見ていくと、今のところ糖質制限の優位さは確認されてないもんですから。
大量の治療法を比べたら…
そこで代表的なのは2013年の論文(1)でしょう。これは、過去に行われた「糖尿病の治療法」に関する研究から質が高い20件を選びだし、データを精査した系統的レビューになっております。
ざっくり言えば「ベストな糖尿病の治療法はどれだ?」って問題について調べた研究でして、現時点ではもっとも信頼ができる内容でしょう。サンプル数は3,073人で、効果をチェックした手法は、
- 糖質制限ダイエット
- ベジタリアン
- ヴィーガン
- 低GIダイエット
- 高食物繊維ダイエット
- 地中海式ダイエット
- 高タンパク食
- 低タンパク食
- 低脂肪食
- 高GIダイエット
- 米糖尿病学会の糖尿病食
といったところ。主だった食事法は、ほぼリストアップされてるんじゃないでしょうか。
糖質制限と地中海式の効果は同じ
その結論を簡単にまとめると、
- 糖質制限でも地中海式でも高タンパク食でも、同じぐらい糖尿病は改善する!
みたいな感じ。以前にも紹介したとおり、地中海式ダイエットってのは未精製の穀物をたんまりと食べる食事法であります。どうやら糖質量が多い食事でも、ちゃんと糖尿病は改善するみたいなんですね。
1年を過ぎると糖質制限の優位性は消える
といったところで、もうひとつ2015年に出た新しめの研究(2)を見てみましょう。タイトルは「糖質制限ダイエットと2型糖尿病:最新の証拠は?」というもので、過去に行われたランダム化比較試験のデータをまとめたレビュー論文になっております。
その結論をサクッと紹介しますと、
- 糖質制限で血糖値のコントロールが改善したというデータは8件中2件のみ。それも短期間の効果でしかなく、1年間を過ぎると糖質が多い食事と効果は変わらない
- コレステロールや中性脂肪の改善レベルも、全体的に糖質制限と高糖質食に違いはない
みたいな感じ。短期的には糖質制限が有効かもしんないんだけど、長期間になると特に優位性はなくなっちゃうみたい。このあたりの結論は、糖質制限ダイエットの減量効果と同じですね。
大事なのはカロリー制限と減量
それじゃあ、結局のところ「糖尿病を治すには何が大事なの?」って話ですけど、この論文でも、やっぱり「体重を落とせ!」って結論であります。研究者いわく、
多くの糖尿病研究が、理想の3大栄養素バランスを模索してきた。しかし、いまのところデータは一貫していない。
2型糖尿病の改善にもっとも関連があるのは、カロリー制限と減量だ。体重を落とす方法はいろいろあるが、糖質制限大事が他よりも優れているという証拠はない。(中略)
糖質制限ダイエットで糖尿病が改善するのは、体重が減るからだ。
とのこと。確かに「糖質制限で糖尿病が良くなった!」ってデータはあるものの、いっぽうでは高糖質でもちゃんと改善は見られてるんで(3)、特に糖質制限が優れてるって話ではなさげ。
糖質制限ダイエットのメリットは、精製された炭水化物の摂取量が減るところが大きいのだろう。決して糖質の摂取量そのものが問題なのではない。
ってことでして、やはりカロリーの質が問題視されておりました。そりゃそうですよね。
まとめ
そんなわけで糖尿病につきましては、以前に「11種類のダイエット法を比べてわかった「最強の減量法」とは?」に書いたことと同じです。要するに、
- 最低でも1年は続けられそうな食事法を選ぶ。種類はなんでもいい。
- 炭水化物カットが苦じゃないなら糖質制限を、脂質を減らすほうが楽なら低脂肪系のダイエットを選べばOK。とにかく自分が長く続けられるのが大事
って感じですね。3大栄養素のバランスに注意するよりも、まずはカロリーの量に気を配ったほうが良いのではないかと思われます。どうぞよしなに。