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バンジージャンプで頭が良くなるぞ!という嘘のような本当の話



激しい感情は頭を悪くさせる!」みたいなことが認知心理の世界ではよく言われれるわけです。


それもそのはずで、極度の幸福や不安みたいな強い感情はどちらも注意力を消費するので、その分だけ合理的な思考に割けるようなリソースがなくなるんですよ。その結果、思考力が低下しちゃうわけです。


……というのが標準的な見解だったわけですが、新しい研究では「そうとは限らない!というか、バンジージャンプで頭が良くなることもある!」って話(R)になってて美味でした。


これはバルセロナ自治大学の研究で、78人の男女を2グループに分けております。

  1. 15〜30メートルの高さからのバンジージャンプ
  2. 特に何もしない(コントロール群)

でもって、参加者にはジャンプの前と後で3つのテストを行いまして、

  • RDS作業記憶:ランダムに表示される数列を逆順に記憶する。ワーキングメモリの容量チェックに使われる

  • ゴー・ノーゴー課題:特定の記号にはすばやくボタンを押し、別の記号にはボタンを押さないように指示される。注意力のチェックに使われる。


って感じで脳の処理力を計測したんだそうな。すると結果は、

  • なにもしなかった人に比べて、高い場所から飛び降りたグループはワーキングメモリが改善し、意思決定の能力も高くなった!

  • ただし、注意力だけは特に変化が見られなかった

だそうです。定説に反して、フリージャンプのようなガクブルな行為で頭が良くなったわけっすね。


ただし、この効果を得るためにはひとつ重要な要件がありまして、

  • フリージャンプを「楽しい!」と思ってないと頭はよくならない

だそうです。極度の感情をポジティブにとらえていれば脳力は上がり、逆にネガティヴに考えると思考力は下がっちゃうみたい。


研究チームいわく、

実験の前は、ジャンプをポジティブにとらえている人は、おそらく極度の感情にともなう悪影響がやわらぐだろうと考えていた。まさか悪影響がまったくないどころか脳機能が改善するとは予想していなかった。


とのこと。確かに意外な結果ではありますが、ちょっと前に「『ストレスはいいものだ!』と考えるだけで仕事の生産性は大きく上がる!」って話があったんで、これと似たように考えればいいのかもですな。


このような現象が起きた理由は謎ですが、研究チームは、バーバラ・フレドリクソンが提唱する「ポジティブ感情の拡張ー形成理論」が関係してるのでは?と推測しておられます。この理論をざっくり言えば、

  • ポジティブな感情は認知機能を柔軟にしてくれるよね!

みたいな考え方です。なにごともポジティブにとらえることで、逆にパフォーマンスが高まるんだってことですね。


まぁたったひとつの研究で判断するのは早計ではありますが、過去にも「緊張する場面では『オレは燃えてるだけだ!』と自分に言い聞かせるといいよー」って報告も出てますんで、いかにもありそうな話だなーと思っております。私は高所が苦手なのでアレですが、ハイジャンプが好きな方はお試しください(笑)

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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