今週末の小ネタ:自制心が強い人ってどんな人? 自分の印象を上げる声の使い方とは? スピルリナが脳を守ってくれるかも?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
セルフコントロール能力とは、要するに「刺激の数を減らせる能力」である
「自制心は筋肉のようなものだ」などとよく申します。自分をコントロール能力は筋肉のようなもので、使いすぎると疲れきっちゃうが、ほどよく使い続けると鍛えられるのだ!みたいな考え方です。この「自制心≒筋肉説」は、私たちのセルフコントロール能力の働きをうまく説明してくれていて、非常に人気があるメタファーではないかと。
ただ、近年は「筋肉の比喩ってズレてないか?」って指摘も増えてきまして、新しいデータ(R)もそのひとつであります。まずは研究チームの問題意識を見てみましょう。
自制心の重要性については、ほとんど疑う余地はない。たとえば、体重を減らすために高カロリー食品を食べないようにするときなどには自制心が欠かせない。
そこで、この研究では、「自制心とは実際に何なのか?」という疑問に的を絞った。かつて、多くの心理学者は、自制心を筋肉のようなものだと考えていた。筋肉のように、常に使っていると「疲れる」「枯渇する」と考えられていたのだ。
しかし、最近の研究では、このような自制心のとらえ方には欠陥があることが指摘されている。
というわけで、実際には自制心は筋肉のようには働かず、なにか違った形で働いているんじゃないか?と、研究チームは考えたわけですね。
そこでチームは、150人以上の人々を集めて、みんなにじっと横になって何もせずリラックスするように依頼。その際に、脳内の電気活動をEEGで記録し、このデータを、事前に評価した全員のセルフコントロール能力と比較したんだそうな。
その結果、なにがわかったかと申しますと、
- 自制心が強い人の脳は、葛藤を押さえつけているわけではなく、そもそも葛藤を処理する量が少ない
だったそうです。どういうことかと言うと、たとえば「ダイエットしたいがお菓子を食べたい!」って葛藤があったとして、自制心が弱い人は「お菓子はダメだ!」って思考に脳のパワーを使いがちなんだけど、自制心が強い人はそもそも「お菓子を食べたい!」って思考が浮かばないようにしている……みたいな話です。
研究チームいわく、
これらの発見は、自制心が、単なる抑制以上のものであることを示唆している。自制心が強い人は、そもそも気が散るような衝動が少ない。そして当然ながら、気が散らない方が目標に到達しやすい。
最近の研究では、目標達成における最大の問題は、葛藤を解決するためのコントロールが欠けていることではなく、そもそも葛藤する動機が存在することだと示唆されている。
とのこと。自制心の低い人ってのは、葛藤に弱いから作業を続けられないのではなく、脳内で多くのタスクが脳のパワーを消費しまくってるってことなんでしょうな。このあたりは「セルフコントロール能力は、身の回りから誘惑を取り除く作業のために使うべし!」という2016年の知見に近いものがありますね。
自分の優位性を高める声の使い方
「会話のはじめに数秒間だけ声のピッチを下げると印象が上がる!」みたいなデータ(R)が出ておりました。
これはイリノイ大学などの研究で、191人の大学生をいくつかのグループに分けて、「月面で災害が起こった場合に最も必要な装備は何か?」ってテーマで議論してもらったんだそうな。でもって、その際にみんなの議論を記録して、「説得力がある人たちはどんなしゃべり方をしているのか?」を記録したらしい。
その結果がどうだったかと言いますと、
- 男女ともに、会話のスタート時に声のトーンを下げた方が、自分の意見を通す確率が高くなり、周囲の人からも「この人は影響力がある!」と評価された。
だったそうです。とにかく声を低くしたほうが説得力が高まるのではないかってことですね。
というと、声が高い人はがっかりするかもですが、ここで重要なのは「地声が高い人でも議論のなかで声を低くすれば説得力が出る」ってとこですね。つまり、どんな声の高さの人でも、説得力を高められる可能性はあるってことですね。
ちなみに、この研究では、参加者に「録音した議論の音声だけを聞いてもらう」って実験もしてまして、以下のような結果が出たんだそうな。
被験者は、話者の表情などを見ることができず、ただ録音された声だけで、人物について判断するように求められた。
すると、やはり録音の声のピッチが下がると、その人はより影響力があり、より力強く、より威圧的で、より支配的だと判断されやすかった。
ということで、こちらでも「声を低くした人は位が高いと思われる」って結果ですね。やりすぎは禁物ながら、コミュニケーションの際に意識しておくといいかもですね。
スピルリナが脳を守ってくれるかも?
スピルリナといえば、定番の健康サプリのひとつ。現時点ではそこそこ良い報告が出ていて、
などと言われてたりします。その健康効果については、すでに600以上の研究論文が発表されており(R)、運動後の肉体疲労と精神疲労が軽くなるなんてことも言われてるんですよね。健康サプリとしては、それなりに見込みがあるアイテムのひとつじゃないでしょうか。
で、新しいデータ(R)は、「スピルリナが脳機能の低下に効くかも?」って話になってました。スピルリナの健康効果を調べた研究は過去にいくつもあったものの、脳の保護効果を調べてくれたものは史上初であります。
これは、韓国海洋科学技術院などの調査で、軽度認知障害(MCI)に悩む80人を募集。みんなに 1 日 1 gのスピルリナまたはプラセボサプリを摂取してもらい、12週間の様子をチェックしたんだそうな。
そのうえで、コンピュータを使った認知テストをやったところ、
- スピルリナを飲んだグループは、プラセボよりも目で見たものをより良く記憶し、ボキャブラリーも増加した。
って結果だったそうです。めっちゃ初歩的な研究なので、これをもって「脳の改善にスピルリナだ!」とは言えないものの、とりあえずおもしろい結果が得られたなーって感じですね。まぁ藻類ってのは50種類以上のビタミンやミネラルが入ってるし、フィコシアニン、クロロフィル、カロテノイドなどの植物栄養素が豊富なので、サプリを使ってみるのも悪くはないかもしれません。
ちなみに、この研究で使われたスピルリナと同じものはiherbで見つからなかったんですが、試してみたい方は「NOW Foods, 天然スピルリナ」などを選んでおけば問題ないかと思われます。