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今週末の小ネタ:プロテインの消化スピード、握力が強い人は頭もいい、クルミの脂肪酸が腸内細菌を改善するかも

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

消化が速いプロテインのほうが筋肉は増えるのか?問題

これまでの研究では、「運動した後で血中のアミノ酸レベルが一気に増えたほうが、筋肉のタンパク質合成が高まるよ!」って話がわりとあったりします。ひらたく言えば、消化しやすいプロテインを飲んだほうが筋肉が増えるんじゃない?ってことですね。

 

 

ただ、これはあくまで仮説だったんで、新しく行われた実験(R)は、30人の男性(平均年齢22.5歳)を対象に真実度をチェックしてくれてます。どんな実験だったかと言いますと、

 

  1. みんなにレッグプレスとレッグエクステンションを1RMの80%でやってもらう

  2. エクササイズの後、ミネラル修飾ミルクプロテインコンセントレート(消化が超速い)、ミルクプロテインコンセントレート(消化がゆっくり)、カゼインカルシウム(消化が超遅い)をそれぞれ25gずつ飲むグループに分ける

  3. 運動前と運動後2時間と4時間後に筋肉のタンパク質合成を確かめる

 

で、結果はこんな感じでした。

 

  • 消化が超速いプロテインは確かに血中アミノ酸を上昇させたが、筋肉のタンパク質合成レベルは、どのグループでも同じだった

 

ということで、どうも血中のアミノ酸レベルが急激に上昇したからといって、筋肉が増えるかどうかは怪しいみたいっすね。

 

 

もっとも、過去には「血中のアミノ酸レベルが上昇したら筋肉のタンパク質合成も増加したよ!」と報告してるデータはあるんで、ここらへんの矛盾がどこから起きてるのかはよくわからんとこです。プロテインとエクササイズの種るが違うからなのかなーとか思いますが、まだまだ謎の多いポイントなのかもですな。とりあえず現時点では、「あんまプロテインの消化スピードにはこだわらなくてもいいのかなー」って印象を持ってますが。

 

 

握力が強い人は頭もいい?

その昔、「握力が強い人は早期死亡率が低い!」とか「握力が強い人はセルフコントロール能力がある!」みたいな話を紹介したことがありました。どうも人間の握力ってのは、いろんな能力の指標として使えるっぽいんですよね。

 

 

で、新しいデータ(R)は、今度は「握力が強い人は頭が良い!」なんて結論になってておもしろいです。

 

 

これは約300人の男性を対象にしたテストで、みんなの握力と歩行スピードを計測したうえで、その結果をワーキングメモリ、視覚記憶、注意力などの機能と比べたところ、

 

  • 歩くスピードが速く、握力が強い男性の方が認知能力が高い
  • 握力が強い人は脳の反応スピードが速く、ワーキングメモリも良好だった

 

という傾向が確認されたそうな。基本的には「握力がある人ほど全身の筋肉量がある」と考えられるんで、今回の結果を見ると、「もしかしたら筋トレは脳の健康維持に役立つのかも?」って気がするわけです。

 

 

研究チームいわく、

 

もし本当に筋力アップが認知機能の低下を遅らせるのに役立つなら、今回の結果は、公衆衛生上の行動に役立てることができるだろう。

 

ってことなんで、とりあえず脳力キープのためにも筋トレ推奨ということで。

 

 

 

クルミの脂肪酸が腸内細菌を改善するかもだ!

ナッツは体に良い!ってのは常識になりつつありまして、なかでもクルミはポテンシャルが高いのではないかなー?とか思っております。

 

 

そこで近ごろ行われたクロスオーバー試験(R)では、「クルミが腸内細菌にも良い影響を与えてくれるかもよ!」って話になってていい感じでした。これは心疾患のリスクが高めな成人42人を対象にしたテストで、BMI、血圧、LDLコレステロールに問題がある人だけを選んだらしい。

 

 

具体的にどんなテストだったかと言いますと、

 

  1. まずは標準的な西洋式の食事を3週間食べてもらう
  2. その後、「1日57~99のクルミを食べる」「クルミはふくまないが、クルミと同じ量のα-リノレン酸をふくむ食事をする」「オレイン酸を含む食事をする」という3パターンの食事を6週間ずつ行う
  3. 血圧とコレステロール値にどんな変化が起きたかを調べる

 

みたいになってます。すると、結果はこんな感じでした。

 

  • 西洋式食事と比べて、3つの食事はいずれも良い腸内細菌の量を増やした
  • 特にクルミを食べたグループは、コリオバクテリウム(心疾患リスクの減少に関わる細菌)の量が増えていた。また、コリオバクテリウムの増加は血圧やコレステロール値の改善と相関していた
  • α-リノレン酸グループは、ロゼブリア(酪酸を作って腸内を守る細菌)の量が増えていた

 

ってことで、全体的に見れば「飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えると腸内環境がよくなるのかな?」と思わせる結果ですね。腸内環境の改善というと食物繊維が注目されることが多いですけど、脂肪酸も大事なんだなーって感じっすな。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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