「完璧主義は人生を狂わせるが、メリットもあるよねー」みたいなメタ分析の話
昔から心理学の世界で評判が悪いのが完璧主義。最近も「完璧主義は死をもたらす!」なんてデータも出てまして、なかなか怖いんですよね。
それもそのはずえ、この世に完璧なんて存在しないんで、いくらパーフェクトな成果を追い求めても時間のムダ。クオリティアップに使う時間を他にさいたほうがいいのは自明でありましょう。
で、新しい研究(1)は、「完璧主義にいいとこってないの?」って問題をあつかってて有用でありました。
これはジョージア工科大学の研究で、過去の完璧主義研究から信頼度が高い95件を抜き出したメタ分析になっております。80年代からの研究を総ざらいした内容になってて、非常によろしいのではないでしょうか。
データは約25,000人のビジネスマンを対象にしていて、完璧主義とのメリットとデメリットをあぶり出してくれたんですな。こりゃいいですねぇ。
では、まず完璧主義にはどんなメリットがあったかと言いますと、
- 完璧主義者は仕事へのモチベーションがとにかく高い!
- ついでに、完璧主義者ほど誠実性も高い!
だったんだそうな。何度も書いてるとおり、誠実性は人生の幸福度を高める大事な指標のひとつ。なんせ誠実性が高い人はマジメに働くんで、いろいろと成功しやすいんですよね。
というと、「あれ?じゃあ完璧主義者は成功しやすいんじゃない?」と思うわけですけど、いっぽうでこんな結果も出てたりします。
- 完璧主義者は仕事に燃え尽きやすい!
- さらにストレスもデカい!
- ワーカホリックになりやすい!
- 仕事の不安を抱えやすく、鬱にもなりやすい!
ってことで、完璧主義のメリットが打ち消されちゃうみたいなんですな。うーん、厳しい。
ちなみに、この研究では「完璧主義者には2パターンあるよねー」と言っていて、
- 卓越追求型:やたらと高い基準を追いかけるタイプの完璧主義者
- 失敗回避型:ミスをやたらと恐れるあまりに完璧を追求しちゃうタイプ
ってなサブタイプを提示しております。モチベーションや誠実性を高めてくれるのはもちろん「卓越追求型」で、その意味では「マシなタイプの完璧主義者」ですな。
もっとも、データを見てると「卓越追求型」も仕事のパフォーマンスが高いわけじゃないんで、せっかくのモチベーションや誠実性を活かせずに終わるのはどちらのタイプでも同じらしい。切ないですねぇ。
その理由は簡単で、完璧を追い求めすぎて、ほかのタスクに使う時間がなくなっちゃうからです。一般的に、30の完成度を80にするのは簡単ですが、90の完成度を99にするのは超難しいもんですからねぇ。
そんなわけで、以上の話をまとめますと、
- 失敗回避型の完璧主義にはメリットがなさそうなんで、セルフコンパッションの技法で悪影響をやわらげる
- 卓越追求型の完璧主義は、モチベーション向上のメリットを活かすために、「タスクが80点ぐらいの完成度になったら止める」とあらかじめ決めておく
って対策が必要になっていきそうであります。私もどっちかというと失敗回避型の完璧主義な面がありますんで、セルフコンパッションは鍛えていかないとなぁ、と。